日本語:Glazeとは || FAQ || WebGlazeについて || ユーザーマニュアル

生成AI モデルは、私達人間が芸術を創造し、作品を堪能する、鑑賞するというプロセスに大きな変化をもたらしました。 特に画像や芸術と言った分野において、生成AIモデルはとても大きな影響を与えています。 拡散モデルを使った MidJourney、Stable Diffusion 等のサービスはオンライン上で、著作権のあるものや、個人のもの、本来慎重に取り扱うべき内容のもの等、多くの芸術作品や画像を使って訓練し、AIの精度を向上させています。 多数の芸術家、アーチスト達が全く知らない間に、合意、著作権表示あるいは報酬の無いまま、自分達の作品がLAION-5B等のAIデータトレーニングに使われ、そのデータに組み込まれてしまっています。

更に、多くの生成AIモデルは、スタイル・ミミクリーという模造プロセスを使ってアーチストたちの作品をコピーしています。 一般ユーザーが、LoRA等で拡散モデルAIツールを使い、特定の芸術家の名前をプロンプトに使って調整するだけで、簡単に特定のスタイルを応用したイメージを生成することができてしまうのです。 オンライン上で、オリジナルの作者名がメタデータとして埋め込まれたまま、品質の低い模造品が見つかっています。

スタイル・ミミクリーは、イメージや芸術品のスタイルを真似ることです。始めは然程大きなこととは考えないかもしれませんが、スタイル・ミミクリーは、実は大きな害を及ぼします。 スタイル・ミミクリーによって意図的に作品がコピーされてしまったアーチストにとって、収入減となるだけではなく、合成された低品質の模造品がオンラインに出回り、彼らのブランドの価値を下げたり、評判を落とすような結果になってしまうのです。 画風や作風といった作品のスタイルは、アーチストにとって長年かけて作り上げた個性、アイデンティティです。 そんな作者の培ったスタイルを基に、無許可で、しかも適切な支払いを受けることなくしてAIコンテンツを作成することは、個人情報を盗むことと同じ次元の行為です。 また、スタイル・ミミクリーは、プロとしての道を切り開いていこうとする次世代の芸術家、アーチスト達の夢を壊したり、モラルを下げて、将来への希望を断ち切ってしまっています。 美術学校、芸術教育機関の管理者や教員によると、美術学校への志願者の数は減少していて、美術家を目指す子供を持つ親達は将来を夢見る子供達の将来をとても懸念しています。

Glaze は、そんなスタイル・ミミクリーを混乱させることによって、芸術家、アーチストを守るシステムです。 Glazeの原理は、ヒューマンアート、つまり実際に人間が創造した芸術作品によってトレーニングされている生成AIモデルを研究して設計しています。 機械学習アルゴリズムを使い作品に対し最小限の変化を埋め込むことで、人間の目ではわからない変化を作品に施し、AIモデル学習の際に、データの中で大きな違いと混乱を引き起こし、本来の作品のスタイルとは全く違ったものとして学習させます。 例えば、私達の目では何も変わっていないように見えるリアリズム絵画の木炭画にGlazeを施す(Glaze化)と、AIモデルには、この作品が全くスタイルの違うジャクソン・ポロック風の現代抽象画として学習させる結果を引き起こします。 これによって、木炭画アーチストをコピーした画像をAIプロンプトに使っても、全く関係のないイメージをAIが生成することになります。

なぜGlazeに効果があるのか?Glazeを取り除くことができるのではないか?等、疑問に思うことでしょう。Glaze効果を取り除くには 下記のような方法があるのではと疑問に思うかもしれません:

  1. 作品のスクリーンショットや写真を撮る
  2. アート作品をクロップする
  3. ノイズを除去する
  4. イメージのサイズやファイル形式を変更する
  5. ファイルを圧縮する
  6. ピクセルを滑らにする
  7. ノイズを加えてパターンを壊す
Glaze は「ウォーターマーク(透かし)」や「ステガノグラフィ(電子透かし)」ではでありません。 ですから上記のような方法でGlazeを簡単に無効にすることはできません。Glaze は作品の一つの要素と考えてください。 AI モデルには見えて人間の目には見えない、まるで紫外線のようなもので、検知したり、演算処理を加えたり、リバースエンジニアリングすることが困難な要素なのです。 Glaze の効果の存在がわかったとしても(ちなみに、Glaze化すると、作品毎にその効果は変化します)Glaze効果を解除することは簡単ではありません。 詳しくは、“How Graze Works”を参考に、Glaze効果を施した作品のサンプルをご覧ください。

リスクと制限: 機械学習に関するリサーチは速いスピードで進化しています。 このため、Glaze等のツールに依存する際には避けることができないリスクが存在します。

  1. 平坦な色彩となめらかな背景の作品にGlazeを施すと、その変化が見えてしまうことがあります。 この点については、新しいアップデート版Glaze 1.0 で大きな進歩を遂げていますが、今後も向上を続けていきます。
  2. Glazeは対AI模造、AIミミクリーに対しする永久的な対応とはなりません。 Glazeや同等の仕組みが、将来の新しい技術に対して耐えうるものとなることは、本質的に困難です (Source: Radiya, et al.)。 今日採用している技術が将来のアルゴリズムによって解明されてしまうことで、Glazeで保護されていた作品が脆弱になってしまう可能性があります。 このため、Glazeは完璧完全な手段とは言えませんが、AIミミクリーに対してアーチストを守るまず最初の手段なのです。 私達の願いは、長期的な法的措置や政治対策が確立されるまでの間、Glazeとこの後に続くプロジェクトがアーチストを保護していくということです。
  3. Glazeは、このようなリスクを伴いますが、私達は可能な限り強靭な仕組みを設計し、広範囲に渡るテストを重ねGlazeを開発しています。 Glazeは、スタイル模造対策としてアーチスト達が使える最強のツールであると信じ、これからも強化を図るために開発を続けていきます。

なぜGlazeか: 私達は、敵対的機械学習モデル(AML:Adversarial Machine Learning)について研究を重ねています。 Glazeを開発することは、将来に向けてポジティブな社会貢献となる機会であると考えました。 なぜなら、「門番」や「エリート主義者」の訴えにも関わらず、アーチスト、芸術家の多くは、クリエイティブで芸術に情熱を燃やし芸術の道を選択していますが、実は決してたくさんの収入があるわけではありません。 また、私達は、法的措置や政治対策が確立される間に、生成AIが人間のアーチストコミュニティを滅ぼしてしまうかもしれないと考えるからです。 Glazeは、そんな人間アーチスト達を生成AIから守る手段になりえると考えています。

私達の目標: 私達の目標は、リサーチを通じて新しいことを発見し学び、そこからポジティブなインパクトを世界に与えることです。 私(Ben)がチームを代表して言えることは、私達は営利目的で活動していないということです。 Glazeにはビジネスモデルも、定期利用料もなく、スタートアップ企業でもありません。 Glazeは誰もが使える無償のサービスですが、敵対攻撃に対する難易度を上げるために、オープンソースではありません。 Glaze はネットワークを不要とし、データの受け渡しを必要としないように最初から設計されています。 唯一サーバーに接続するのは、ソフトウェア更新があるかどうかを確認する時のみです。

WebGlaze: 初めてGlaze を2023年3月にリリースした当初、私達はアーチスト、芸術家達がどのように仕事するかを理解していませんでした。 リリース後、アーチストの多くはモバイルデバイスを使って作業していて、強力なCPUを搭載したコンピュータへのアクセスがないことを知りました。 大勢のアーチストから、Glazeをもっとアクセスしやすくして欲しいという要望を受け、2023年8月、無償Web版のGlaze、WebGlazeをリリースし、アーチストが携帯やタブレット等のデバイスのブラウザ経由で、作品にGlazeを施す(Glaze 化する)ことを可能にしました。 WebGlazeは私達が費用を負担して、Amazon AWS Cloud 上にあるGPUサーバ(Graphic Processing Unit)でホスティングし、無償でサービスを提供しています。 WebGlazeは他のバージョン同様、研究助成金で運営負担し、芸術家、アーチストの方々に対して無償で提供しています。

Mac、旧型のPC、NVidia GPU以外のプロセッサ、あるいはNVidia GTX 1660/1650/1550を使っている場合、 パソコン版のGlazeではなくWebGlaze を使ってください。WebGlaze は現在、招待制の登録でのみ利用が可能です。 この招待制登録は今後も変わる予定はありません。生成AIを使っていない芸術家、アーチスト(人間)のみに利用を許可しています。 WebGlazeの利用を希望する方は、Twitter、インスタグラムから @TheGlazeProject 宛にDMを送るか、 電子メール(回答に時間を要します)までご連絡ください。 招待状を受け取った後、https://webglaze.cs.uchicago.eduにアクセスして作品にGlazeを施行してください。WebGlazeに 関する詳しい情報はここクリックしてください。

Glazeに関する詳しい情報については下記のページを参考にしてください(英語):

サンプル: 以下サンプルは作者の許可を得て掲載しています。作品提供に協力してくれた芸術家、 アーチストはSarah Andersen、ScarlettAndTeal、Karla Ortiz、Eva Toorenent、Jingna Zhang そして Bill Saltzsteinです。白黒鉛筆による漫画から、フラットカラースタイルのイラスト、油絵、そして高画 質写真まで、多岐にわたる分野の作品が掲載されています。

Karla Ortiz
@kortizart  http://www.karlaortizart.com
ScarlettAndTeal
@scarlettandteal

Glazed

Glazed

Eva Toorenent
IG: @evaboneva     https://www.evaboneva.com

Sarah Andersen
@SarahCAndersen    https://sarahcandersen.com

Glazed

Glazed

Jingna Zhang
@zemotion       https://www.zhangjingna.com,       Cara.app/zemotion

Original

Glazed

Bill Saltzstein
https://www.billsaltphoto.com

Glazed

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